わたしたちには見えていないものがたくさんある
視力の話をしているのではありません。
わたしたちには、見えていると思っていても、実際には見えていないものがたくさんあります。物理的には見えているはずなのに、印象に残らず見えていないのと同じ状態になっている、ということです。
見えてるのに見えてないとは?
人間は、頭に入ってくる情報のうち、視覚によるものが大半を占めているものです。実際、たった一日の中でも多くの物を目にして、いろんな情報をキャッチしているのです。
ところが、物理的にはきちんと見えているのに、見えていないことがたくさんあります。
あなたは、仕事中にトイレに行くことがあると思います。おそらく、一日に何回も。では、トイレはいつもキレイな状態になっていますか?
記憶をたどってみても、「多分キレイだと思う」程度の記憶しか出てこないと思います。
では、実際にトイレを見に行ってみましょう。「どこにも汚れは無いか?」と意識しながらくまなく見てみてください。すると、いつも見ているはずのトイレが、あちこち汚れていることに気づくと思います。(もし、とてもきれいなのだとしたら、清掃業者の方と、キレイにトイレを使う社員みんなに感謝しましょう)
普段なにげなく見ているものというのはほとんど記憶に残りません。記憶に残ってると思っていても、実際には自分の脳内補正が働いていたりして、実態をとらえきれていないものなんです。
ちなみにそのトイレ、取り引き先の人やお客様が利用することはありませんか?
もし、外部の方も利用されるトイレなら、汚れているのは許されることではありません。今すぐ改善が必要でしょう。(自分たちで清掃しているなら、朝礼のときにでも指摘を。清掃業者に依頼しているなら上司に相談を。)
意識しないと見えないものがたくさんある
上記のトイレの例のように、いつも見ているものでも、実は全然ちゃんと見ていない、ということはたくさんあります。夫婦でも、ある日突然奥さんが怒って家を飛び出した、なんて話がありますが、きちんと意識して見ていれば、それまでに奥さんはたくさん怒りや不満のサインを出していたはずなんですよね。
これは、仕事でも起こりうることです。たとえば、お客様からのクレーム。ある日突然クレームが来て、それが社長まで出ていくような大問題になったりもします。でも、そのような問題はいきなり起こるわけではなく、今までにもクレームになりそうな問題はいくつもあったはずなんです。それに気づかず、見ないふりをしてきたために、ある日突然爆発してしまいます。
仕事上で起こる問題というのは、たいていいきなり発生するものではありません。大問題になる前には、小さい問題がいくつも発生しているはずです。きちんと新人教育が出来ていないとか、社員同士がなあなあで働いているとか、システムに不備があるのを放置していたとか、よく考えれば知っていたはずなのに、大問題が起こってしまうまでまったく気にもとめていなかった、ということがたくさんあるのではないでしょうか。
そう思うと、ニュースをにぎわすような大企業の不祥事も、おそらくこの類いなのでしょう。はたから見れば、「なんでそんなことが起こるの?」、「ちゃんと前もって対処していれば問題は起こらなかったんじゃないの?」と思ってしまいますが、中にいるとつい見過ごしてしまうような小さな問題から、ニュースになるような不祥事が起こってしまったのかもしれません。
見えないものを見るためには
このように、わたしたちは目が悪いわけではなくても、見過ごしてしまう問題がたくさんあります。これを見逃さないようにするにはどうすればいいのでしょうか?
まず、もっとも大切なのは、意識することです。ぼんやりと、無意識でいるから見逃してしまうのであって、「トイレは汚れていないか?」というように意識して物事を見る目を養わなくてはなりません。いきなり細かいことに気づけるようになるわけではありませんが、意識していればいろんなものが見えてくるようになります。
実際、トップセールスマンや気配りのできる人というのは、他の人よりも多くのものが見えているものです。
そして、小さな問題に気づけるようになったら、それを見過ごさず、すぐに改善策を講じることです。些細な問題を見えなかったことにして放置するから大きな問題に発展するのであって、小さな問題に対してもすぐ対処するようにしていれば、大きな問題が起こるのを防ぐことが可能になります。
いきなりすべてを改善するのは難しいものですが、朝礼の際に情報共有するなどして、職場全体で小さなことや不都合なことを見過ごさない空気を作っていくようにしましょう。